「全国で待機児童が減っている」というニュースを見て、保活への不安が少し和らいだ方もいるかもしれません。確かに待機児童数は減少傾向にあります。ただ、その全国集計の数字を見ただけで「うちの地域も大丈夫だろう」と判断するのは、少し立ち止まって考えてほしいところです。
こども家庭庁が令和7年8月に公表した一次統計を読み解くと、待機児童の問題は地域によってまったく異なる顔を持っていることがわかります。この記事では、全国合計の「平均値」に惑わされずに保活を進めるための視点を、データをもとに整理します。
令和7年4月のデータが示す「2つの日本」
令和7年4月1日時点の全国待機児童数は2,254人です。これだけを見ると少なく感じるかもしれません。しかし内訳を見ると、状況はずっと複雑です。
2,254人のうち、都市部に集中しているのは1,419人で、全体の63.0%を占めます。ここでいう都市部とは、首都圏(埼玉・千葉・東京・神奈川)と近畿圏(京都・大阪・兵庫)の7都府県、ならびにその他の指定都市・中核市を指します。残る835人(37.0%)が、それ以外の全道県に分布しています。

市区町村単位で見ると、この偏りはさらに鮮明です。全国1,741市区町村のうち87.9%にあたる1,530市区町村では待機児童がゼロ。つまり全国の約9割の自治体では、保育所等に入れなかった子どもが統計上ゼロという計算になります。待機児童が存在するのはわずか211市区町村です。
利用児童数で見ると、都市部が1,700,608人、その他の道県が977,809人。都市部には利用している子どもの数そのものが多く、需要の集中度合いが高い実態があります。全国集計の数字は「平均」ではなく、2つの異なる状況が重なり合った結果です。
都市部に待機児童が集中する構造的な背景
このデータから見えてくる偏りには、いくつかの構造的な理由が考えられます。
まず、人口密度と共働き世帯の集中です。都市部では子育て世帯が狭いエリアに密集し、保育需要が一か所に集まります。新たな保育施設の整備には土地・建物・保育士の確保が必要ですが、都市部ほどこれらのコストと調達の難しさが増します。需要の増加に対して供給の拡大が追いつきにくい構造があります。
次に、転入・転出の流動性という要素があります。都市部には毎年一定数の子育て世帯が引っ越してきます。保育定員は前年度の実績をベースに積み上げられる部分も多いため、急増する需要に対して施設整備が後手に回る局面が生じやすくなります。
さらに、統計の定義上の問題も見落とせません。こども家庭庁の待機児童の定義では、認可外保育施設(企業主導型保育事業等)を利用している場合には待機児童に計上されないケースがあります。都市部では認可外施設の選択肢が相対的に多いため、希望する認可保育所に入れなかったとしても、統計上の待機児童には含まれないことがあります。数字に現れない「隠れた待機」の問題は、実態をさらに複雑にしています。
一方、地方・農村部では少子化や人口減少が進む地域も多く、保育定員に空きが出やすい環境があります。その結果が、全国の約9割の市区町村で待機児童ゼロという状況です。同じ「全国データ」の中に、都市と地方で構造がまったく異なる2つの現実が同居しています。
保護者が保活前に確認しておきたいこと
全国データは自分の自治体の実態を教えてくれない
最も重要な前提として、全国集計の統計は居住する自治体の実態とは切り離して考える必要があります。87.9%の市区町村で待機児童ゼロという数字も、都市部で保活中の保護者には直接役立つ情報ではありません。逆に、都市部の中でも区・市によって、また年齢クラスによって状況は大きく異なります。
まず確認すべきは、自分が住んでいる(または転居予定の)自治体が、待機児童が存在する211市区町村の側なのか、ゼロの1,530市区町村の側なのかです。そこが出発点になります。
自治体が公表するデータを直接当たる
多くの市区町村は、認可保育所の入所状況や待機児童数を毎年公表しています。入所選考の仕組みや、利用できる保育施設の種類も自治体によって異なります。全国統計はあくまで全体像を俯瞰するための素材。実際に保活を進める際には、住んでいる自治体の担当窓口や公式サイトで最新情報を確認することが具体的な一歩になります。制度や状況は毎年変わる可能性があることも念頭に置いてください。
「ゼロ地域」でも状況を個別に把握する必要がある
待機児童ゼロの自治体であっても、希望する保育施設・希望の年齢クラスに入れないケースはあります。「ゼロ」は、保育の場が何らかの形で確保されている状態を示す数字であり、第1希望の認可保育所に全員が入れていることを意味するわけではありません。数字の定義を理解した上で読む視点が必要です。
都市部では年齢クラスごとの状況把握が鍵になる
都市部の自治体では、年齢クラスによって入所の競争状況が異なる場合があります。0歳・1歳・2歳のどのタイミングで申し込むかによって結果が変わることがあります。自治体が公表している年齢別の利用状況や過去の倍率データなどを事前に把握しておくと、申込みのタイミングを検討する材料になります。年齢別の具体的な点数基準や保育料の金額は自治体により異なるため、各自治体の公式情報を確認してください。
おわりに
令和7年4月のデータが示しているのは、待機児童問題が「全国一律の課題」ではなく、「住む場所によって状況がまったく異なる課題」だという事実です。2,254人という全国数字の63.0%が都市部の1,419人に集中する一方、全市区町村の87.9%では待機児童がゼロ。この「2つの日本」が同じ一枚の統計に収まっています。
全国の数字はあくまで地図です。実際に歩くのは、自分が住む自治体という現場です。保活の難易度は居住地域によって大きく変わります。まず自分の自治体の状況を具体的に確認することが、次の手を考える上での土台になります。この記事の数字は令和7年4月1日時点のデータに基づくものであり、制度や状況は今後変更される可能性があります。
出典
- こども家庭庁「保育所等関連状況取りまとめ(令和7年4月1日)」(2025年(令和7年)8月28日公表)
【出典】こども家庭庁「保育所等関連状況取りまとめ(令和7年4月1日)」(2025年(令和7年)8月28日公表)/一次資料: PDF
本記事は保育園コンパス編集部がこども家庭庁・厚生労働省・各自治体の保育情報をもとに作成しています。保育制度は自治体ごとに異なります。最新情報は各自治体の窓口でご確認ください。 編集ポリシーはこちら
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