保育所の数は増えているのに、通っている子どもの数は減っている──。そんな「逆行」とも見えるトレンドが、こども家庭庁の一次統計に現れています。この記事では、令和6年4月1日時点の公式データをもとに、保育所等の施設数・利用児童数・定員充足率の推移を読み解きます。全国のマクロな数字が示す構造変化を知ることで、これから保活を始める方、施設選びの時期を検討中の方が判断材料にできる視点をお伝えします。
データで見る現状:施設は増え、利用児童は減る
こども家庭庁「保育所等関連状況取りまとめ(令和6年4月1日)」によると、令和6年4月1日時点の全国の保育所等の施設数は39,805か所です。前年から216か所(0.5%)増加しており、施設整備は引き続き着実に進んでいます。
一方、同時点で保育所等を利用している児童数は2,705,058人。前年(2,717,335人)から減少しており、こども家庭庁の発表によれば3年連続の減少となっています。施設は増えているのに、利用する子どもの数は減り続けているという、一見すると矛盾した状況が数字の上に表れています。

利用定員を見ると3,044,678人で、前年比0.2%の微減となっています。施設数は増えているのに定員がわずかに減少している背景には、定員規模が比較的小さい施設類型の比率が変化している可能性などが考えられますが、詳細は自治体・施設の状況によって異なります。
定員充足率88.8%が示す「量の一巡」
この状況を端的に示しているのが定員充足率(利用児童数÷利用定員)という指標です。令和6年時点でこの値は88.8%(前年比0.3ポイント減)となっています。
充足率が100%に近いほど「定員いっぱいに子どもが通っている」状態を意味します。88.8%という数字は、全国平均として見れば定員の1割強が空席になっていることを表しています。これは保育の「量」という観点において、整備が実需に追いついてきた──あるいは地域によっては需要を超えはじめている──ことを示すサインと読めます。
ただし、これはあくまでも全国の平均値です。都市部の一部地域では依然として競争率が高く、希望する施設への入所が難しい状況が続いている場合もあります。「全国平均の充足率が下がった=空きがある」と単純に受け取ることはできない点には注意が必要です。
なぜこうなっているのか:背景にある構造変化
少子化による実需の縮小
利用児童数が3年連続で減少している背景の一つは、保育対象となる年齢の子どもの数そのものが減少していることです。どれだけ施設を整備しても、利用する世代の人口が減れば利用者数は増えません。この構造は今後も継続する可能性があり、施設整備と需要のギャップはさらに広がる地域が出てくることも考えられます。
「量の整備」フェーズから「質・偏在解消」フェーズへ
国と自治体はこれまで、待機児童解消を最優先課題として保育施設の量的拡大を推進してきました。令和6年時点で全国の定員充足率が88.8%まで下がってきたことは、その政策の一定の成果と見ることができます。
今後は「施設の数を増やす」ことよりも、保育の質の向上、保育士確保、そして「空きが多い地域」と「依然として入りにくい地域」の偏在解消が、政策の中心的な課題になっていくと考えられます。保護者の立場からは、「近所に施設はある、でも希望の施設・地域には入れない」という状況が、今後はより明確に現れてくる可能性があります。
施設の「種類」の多様化
統計上の「保育所等」には、認可保育所だけでなく、認定こども園、小規模保育施設、家庭的保育事業など複数の施設類型が含まれています。こうした多様な施設が普及するなかで、定員の規模や対象年齢、利用可能な時間帯、申込方法などは施設の種類によって大きく異なります。施設数のカウントが増えていても、それが保護者のニーズとどう一致しているかは別の問題です。
保護者が知っておきたい実務的な視点
全国平均を「自分の地域の話」と混同しない
定員充足率88.8%という数字は全国の平均値です。都市部・郊外・地方では状況がまったく異なり、同じ市区町村内でも地区や施設の種類によって空き状況は変わります。「全国的に空きが増えているから急がなくていい」という判断は、地域によっては大きなリスクになり得ます。
保活を始める前に、まず居住する自治体が公表している保育ニーズ調査や待機児童数、利用状況のデータを確認することが出発点になります。
申込時期と手続きは自治体ごとに確認を
認可保育所等の入所申込には、自治体ごとに締切時期や選考基準が設けられています。どの時期に申し込むと翌月入所の対象になるか、どのような書類が必要かも自治体によって異なるため、居住地の担当窓口または公式ウェブサイトで必ず最新情報を確認してください。
施設の種類ごとの特性を把握する
「保育所等」として統計に含まれる施設には、対象年齢や定員、保育時間、卒園後の進路先などに違いがあります。たとえば小規模保育施設は対象年齢に制約がある場合があり、卒園後の転園先の確保が必要になることもあります。こうした点は施設の種類や自治体の制度によって異なるため、各自治体の公式情報でご確認ください。
転居を検討している場合は移転先の状況も調べる
全国平均の充足率が下がっているということは、地域によっては選択肢が広がっている可能性があることも意味します。もし居住地の変更を検討している方は、移転先の市区町村の保育環境(定員充足状況、施設の種類、申込スケジュールなど)についても事前に情報収集することをおすすめします。
保育料は自治体・施設によって異なる
保育料については、認可保育所の場合は世帯収入などをもとに自治体が決定する仕組みがとられていますが、具体的な金額や区分は自治体ごとに設定されています。また3歳以上は幼児教育・保育の無償化の対象となっている場合がありますが、対象外の費用(給食費・保育用品など)が別途かかるケースもあります。詳細は必ず居住する自治体の窓口にご確認ください。
まとめ
令和6年4月1日時点の統計は、日本の保育をめぐる環境が大きな転換点を迎えていることを示しています。
- 保育所等の施設数:全国39,805か所(前年比216か所・0.5%増)
- 利用児童数:2,705,058人(前年の2,717,335人から減少・3年連続の減少傾向)
- 利用定員:3,044,678人(前年比0.2%減)
- 定員充足率:88.8%(前年比0.3ポイント減)
施設整備が進む一方で利用児童数と充足率が下がるというトレンドは、「量の整備から質・偏在解消へ」という保育政策のフェーズ転換を示唆しています。ただし、全国平均のデータは地域ごとの実態の差を均したものであり、都市部では依然として入所競争が続いている地域もあります。保育制度の詳細・保育料・申し込み手続き・施設の具体的な条件はすべて自治体や施設によって異なるため、保活を進める際は必ず居住地の自治体が公表する最新情報をご確認ください。
出典:こども家庭庁「保育所等関連状況取りまとめ(令和6年4月1日)」(2026年(令和6年)8月公表)
【出典】こども家庭庁「保育所等関連状況取りまとめ(令和6年4月1日)」(2026年(令和6年)8月公表)/一次資料: PDF
本記事はRoute Bloom編集部が厚生労働省・各自治体の保育情報をもとに作成しています。保育制度は自治体ごとに異なります。最新情報は各自治体の窓口でご確認ください。 編集ポリシーはこちら
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