保活を始めたばかりの保護者から、「少子化が進んでいるのなら、保育所に入りやすくなるの?」という声をよく聞く。答えは「地域によって異なる」なのだが、その前提として、今の出生数が実際にどこまで落ちているのかを一次データで確認しておく必要がある。令和6年(2024年)の人口動態統計(概数)が令和7年に公表され、出生数の実像が明らかになった。数字を丁寧に読むと、単なる「少子化のニュース」では片づけられない構造が見えてくる。
令和3〜6年の実数で見る:4年間で125,561人の減少
厚生労働省の「令和6年人口動態統計月報年計(概数)の概況」によると、令和6年の出生数は686,061人だった。前年、令和5年の727,288人と比べると41,227人の減少だ。令和3年からの推移を並べると、令和3年811,622人・令和4年770,759人・令和5年727,288人・令和6年686,061人となる。

この数列で目を引くのは、減少幅の「一定さ」だ。令和3→4年は40,863人の減少、令和4→5年は41,471人の減少、令和5→6年は41,227人の減少。3期連続で、ほぼ4万人強というペースが続いている。急落でも緩やかな減速でもなく、一定速度で刻まれている。この均一さは、特定の社会的ショックによる一時的な落ち込みではなく、構造的なトレンドが安定して進行していることを示唆する。
合計特殊出生率は令和5年の1.20から令和6年には1.15へと低下した。この指標は「一人の女性が生涯に産む子どもの数」を表す目安で、人口を維持するためには一定の水準が必要とされているが、1.15はそこに遠く届かない数字だ。出生数の絶対数が減り続け、かつ出生率も下がっている。両方の数字が同時に悪化していることは重要な点だ。
なぜ毎年4万人ずつ減り続けるのか
出生数が「均一なペースで」減っている背景には、複数の構造要因が絡んでいる。この記事で使えるデータは出生数と出生率に限られているため、背景については一般に認識されている範囲で整理したい。
まず挙げられるのは「分母の縮小」という問題だ。出生数は、子どもを産み得る年齢層の人口規模に直接左右される。現在の出産適齢期にあたる世代は、それより前の世代よりも絶対数が少ない。つまり、一人当たりの出生率が仮に横ばいだったとしても、母数となる女性人口が減っていれば、出生の絶対数は自然に落ちていく。人口学ではこの現象を「少子化の慣性」と呼ぶことがある。少子化の影響は、当事者世代が出産年齢に達する数十年後まで数字として表れ続ける仕組みだ。
もう一点は、日本固有の婚姻と出産の結びつきだ。欧米と比べると、日本では婚外出生の割合が低く、結婚という選択が出産の前提として機能してきた。晩婚化や未婚化の進行が、そのまま出生数に影響しやすい構造になっている。経済的な見通しの立てにくさ、住居費、仕事と育児の両立といった問題が積み重なっていることは、多くの調査で繰り返し確認されている。ただし、これらの要因の地域ごとの重みは異なるため、詳細は各自治体の統計資料に当たることを勧める。
令和6年の686,061人という数字を「70万人を割った年」として記憶しておくことには意味がある。80万人台を割ったのが令和4年、70万人台を割ったのが令和6年と、節目の通過が加速している。
保活で「少子化のトレンド」をどう使うか
全国の出生数が減っているという事実は、保活中の保護者にとって何を意味するのか。「子どもが減れば保育所に入りやすくなる」という直感は完全には外れていないが、そのまま当てはめると判断を誤りやすい。
全国トレンドと「自分の自治体」は別物として扱う
出生数の減少は全国一律には進まない。東京都心や政令市など人口が集中するエリアでは、依然として保育需要が高い状態が続いているケースがある。一方、人口流出の続く地方自治体では、定員割れの認可保育所が増え、統廃合の議論が始まっている地域もある。令和6年の全国合計が686,061人であっても、自分が居住する市区町村の出生数と保育定員の関係は、必ず個別に確認が必要だ。
各自治体は毎年、保育所等利用待機児童数の状況や、定員・申込者数を公開している。自治体の窓口や公式ウェブサイトで、居住地の最新数値を取り寄せるのが実務的な第一歩になる。
出生数が減っても「希望の枠」は空くとは限らない
全体の入所倍率が緩和傾向にあるとしても、希望する認可保育所・希望する入所月・希望する年齢クラスで空きがあるかどうかは、また別の話になる。認可保育所の利用調整は自治体ごとに異なる基準で行われており、点数(選考指数)の算出方法や優先順位のつけ方は自治体によって大きく異なる。詳細な基準は各自治体の公式情報を確認してほしい。
特定の地域・特定の施設への需要集中は、少子化が進む局面でも解消しないことがある。「選択肢を複数持つ」「候補となる施設タイプの幅を広げる」という動きは、競争の度合いに関わらず保活の基本として有効だ。
申し込みのスケジュールは自治体ごとに異なる
翌年4月入所の申し込み受付は、例年秋ごろに開始する自治体が多い。ただし、開始時期や必要書類、加点の対象となる条件は自治体によって異なるため、居住地の自治体窓口への早めの問い合わせが確実だ。少子化の状況は今後の制度設計にも影響を与えうる。保育料や無償化の対象範囲、施設整備の方針なども、変更される可能性がある点は念頭に置いておきたい。
まとめ・出典
令和6年の出生数686,061人・合計特殊出生率1.15という数字は、令和3年から4年間で一定ペースが続いてきた減少の延長線上にある。この構造的な変化は、今後の地域の保育所運営や、国・自治体の保育政策にも影響を与え続ける要因だ。
保護者として準備できることは、全国統計を「背景知識」として持ちながら、居住地の最新データで実態を確認することだ。少子化が進む時代に生まれた子どもを持つ保護者が、情報の非対称性に振り回されないために、一次データを自分の目で確認する習慣は力になる。記事内の情報は公表時点のものであり、制度や統計値は変更される場合があるため、必ず各自治体・公的機関の最新情報を確認することをお勧めする。
出典:厚生労働省「令和6年(2024)人口動態統計月報年計(概数)の概況」(2025年(令和7年)公表)
【出典】厚生労働省「令和6年(2024)人口動態統計月報年計(概数)の概況」(2025年(令和7年)公表)/一次資料: PDF
本記事は保育園コンパス編集部がこども家庭庁・厚生労働省・各自治体の保育情報をもとに作成しています。保育制度は自治体ごとに異なります。最新情報は各自治体の窓口でご確認ください。 編集ポリシーはこちら
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